『ミス・サンシャイン』吉田修一著 (文藝春秋, 2022.1) 8月9日を思い出す。 僕の祖父・濵田松之助は大正元年生まれで、第二次世界大戦の末期、昭和18年に召集された。当時31歳。妻と男の子3人、女の子2人の家族6人を佐世保に残し、長崎市へ向かった。 2年後、昭和20年には、二等兵から兵曹となり18人の高射砲隊の一員として、稲佐山に駐屯していた。敵の戦闘機を狙っていたのだ。 「何機かは、撃ち落としたけどね、グラマン(戦闘機)は撃ち落とせんかった」 と、松之助は後に長男(僕の父)へ語っている。8月9日も、彼は稲佐山にいた。11時2分、突き刺すような光を感じた瞬間に近くの防空壕へ飛び込んだ。戦…