1925年新潮社より上梓された山内義雄の飜譯を読む。 『モンナ・ヴァンナ』。"Monna"は既婚女性に対する尊称"Madonna"の省略形、Vannaは女性名"Giovanna"の省略形、つまり「ジョヴァンナ夫人」の意である。名こそドン・ジョヴァンニに通ずる所があるが、本作のモンナ・ヴァンナはこの漁色家を白眼に見下げる、叡智と美と正義とを具へた「永遠の女性」である。 三幕からなる戯曲。場所は14世紀のイタリア。フィレンツェ軍の包囲に遭ひ、敗北に瀕したピサの司令官、その妻ヴァンナは、敵将の意に従ひ、飢ゑた三万の人民の為、彼の下へ行く事を肯じた。 個性に富んだ登場人物。筋の立つたプロット。上演した…