失敗した記憶というのは不思議と脳内に残ります。ふとした拍子にそれを思い出して声を出さぬものの「うがあああああ」となったりします。ただ本を読むと似たような体験をする人はいるらしく、開高健さんの「耳の物語」の中に(現在のサントリーである)寿屋の特約店向け冊子の取材で訪問した酒屋で失言したことをずっと忘れられずにいて「アチチ」となる事例に触れていて、読んで「ああおれだけではなかったのだ」と妙な安心をしました。妙な安心をした数分後「おれは作家ではないのだから物語に昇華することのない体験などを大事に記憶してたってしょうがない」と気づくのですが、失敗した記憶というのはdeleteしようとしてもなぜか失敗す…