はじめに そこそこ長いこと棚に並んでいた、カルペンティエールも片づける時期にきた。で、読んだのが晩年の大作『春の祭典』だった。 春の祭典作者:アレホ・カルペンティエール,Carpentier, Alejo,孝敦, 柳原国書刊行会Amazon が、正直、後味の悪い作品だったと言わざるを得ない。かつて読んだ、コルタサルの『かくも激しく甘きニカラグア』と同じ、芸術と革命のたいへんにおめでたい野合を歌い上げる作品で、すでにこの時期に老成した大作家だったカルペンティエールが、本気でこれを書いたのか、あるいは訳者解説にあるように、何やらキューバ政府から「もっとキューバ翼賛しないとは何事か」とつきあげをくら…