一九三九年九月一日、ドイツ、ポーランドに侵攻開始。 「二十年の停戦」はここに破れた。第二次世界大戦の開幕である。フェルディナン・フォッシュが嘗て危惧したそのままに、世界は再び一心不乱の大戦争へどうしようもなく突入してゆく。 ドイツの動きは早かった。なんといってもルビコンを渡るより以前、八月二十八日の段階で、もう食糧と一部生活必需品とが切符制度に移行している。前日、二十七日付けで公布された「生活必需品確保の暫定令」及び「農産物管理令」の効果であった。 切り替えにあたってナチ党は、これをスムーズに運ばせるため、当時の食糧農業大臣リヒャルト・ダレをラジオ放送に当たらせて、国民一般に「政府の声」を響か…