一九四一年、レンドリース法、議会を通過。 この一報が電波に乗って日本国に伝わるや、日頃「米国通」を以って任ずる一部の言論人たちに、尋常ならざる波紋が起きた。 震撼したといっていい。 就中、鶴見祐輔に至っては、同年五月に寄稿した「ルーズヴェルト大統領の独裁的地位」なる小稿中で、 「今度武器貸与法が上下両院を通過したので、ルーズヴェルト大統領の地位は、ヒトラー、スターリンと並ぶ独裁的なものになってしまった」 まずこのように、最大級の脅威判定を行っているほどである。「勿論米国においては、民衆輿論の制約があり、これを代表する議会と、更にその外に超然たる大審院の潜在的威力がある。しかし近代米国の政治組織…