本書の最終話はプエルト・リコに駆け落ちした若いカップルの話です。緑したたるその島は、楽園のイメージとは裏腹に若き二人に厳しい現実を迫ります。この最終話を通じて、いつものように本書全体を俯瞰してみたいと思います。 《あらすじ》 二人は妊娠という厄介な問題を先送りするためにプエルト・リコにやってきた。結婚も考えてはいたが、関係が長くは続かないことを互いによく分かっていた。女は生まれてくる赤ん坊を二人で養うのか、それとも誰かに譲るのか、男に決断を迫る。 『あなたどうするつもりなの?』 「さあ、気持を決めてよーーーあなたどうするつもりなの?」「まだ何ヵ月かあるじゃないか」「六週間よ」と彼女はぴしゃりと…