【届けられた妻の下着】 この九月には、庄の大嬢から、平城京の家持のもとへもう一つ大切な贈り物が届きました。それは、大嬢の下着です。下着を受け取った家持が庄の大嬢に贈った歌が、続いて収載されています。 (秋の相聞 巻八の一六二六)(歌は省略) ここでいう『形見』とは、もらった相手を偲(しの)ぶよすがとなる品のことをいいます。ただ、現代と違うのは、死に別れのときだけでなく、生きて別れるときにも贈答するものだった、ということです。・・・大嬢は身につけていた下着を脱いで、『形見』として家持に贈ったのでした。そのお礼を述べた歌が、この歌なのです。『秋風が寒くなってきたこのごろ、衣の下に着込みましょう』と…