【妻問婚と待つ女の文芸】 「・・・待つことの苦しみを歌った歌は、『万葉集』のあちこちに見られます。・・・万葉の時代には妻問婚(つまどいこん)という結婚の形式が、広く行われていました。・・・こういった結婚形態においては、妻は一般に夫の訪れを待ち続けることになります。・・・古代の結婚形態の特質を背景に発達したのが、恋人や夫の訪れを待つ女歌の世界すなわち『待つ女の文芸』といわれるものなのです。」 【君待つと我が恋ひ居れば……】 「『待つ女の文芸』について言及したからには、この歌を挙げないわけにはいきません。 (相聞 巻四の四八八)(同 同四八九)(いずれも歌は省略) 『あっ、すだれが動いた。来たか、…