【心と心を結ぶ手紙】 天平十一年「九月、坂上大嬢(さかのうへのだいぢゃう)が『竹田の庄』ないし『跡見の庄』と思われる場所から、家持に歌を贈っています。地名が詠み込まれていないのでどちらかは特定できませんが、大嬢も庄に下向していたのです。その時期が、坂上郎女の竹田の庄滞在期間と重なるのか、重ならないのか、判断できません。母と娘は一緒に滞在していた可能性も高いと思われます。ともあれ、大嬢が庄に下向し、そこから平城京の家持に歌を贈ったということだけは確かです。 そこで、書簡で行われたであろう歌の往来にしたがって、歌を順次見てゆきましょう。 (秋の相聞 巻八の一六二四)(歌は省略) 大嬢は、稲で作った…