第7章 愛情と怨恨 【「愛憎半ば」といっていまえばただそれだけのことだが……】 「・・・第7章では、その愛情と怨恨(えんこん)が歌のなかでどのように表現されているかを・・・みたいと思います。・・・」 【異色、異例の長歌】 「愛憎半ばとはよくいいますが、『万葉集』をひもとくと、深く愛するがゆえに発せられる憎悪の言葉を、時折聞くことができます。しかしわたしは、次の歌ほど小気味よい、他者に向けられた憎悪の言葉を知りません。それは、夫の浮気相手の女に対する激しい攻撃の言葉を含んでいます。巻十三には、次のような歌が伝わっているのです。 (相聞 巻十三の三二七〇)(同 同三二七一)(歌は省略) 【なぜ薦を…