【大伴坂上郎女の怨恨歌】 「つまり、『待つ女の文芸』は、次の二つによって支えられているのです。一つは当時の婚姻関係であり、もう一つは中国の閏怨詩です。そういう『待つ女の文芸』の系譜に連なる作品を、坂上郎女も残しています。その名も『怨恨歌』といいます。 (相聞 巻四の六一九)(同 同六二〇)(いずれも歌は省略) ・・・男は『年深く 長く』といったようなのです。つまり、君との付き合いは永遠だよ、といって口説いたのです。・・・女は、一点の曇りもなく磨かれた鏡のように心を研ぎ澄ましていたのに、といっています。・・・女は『年深く 長く』という言葉を信じ、心を許したといっています。ところが、・・・男は通っ…