先の世にも御契りや深かりけむ、 世になく清らなる玉の男御子さへ生まれたまひぬ。 いつしかと心もとながらせたまひて、 急ぎ参らせて御覧ずるに、 めづらかなる稚児の御容貌なり。 一の皇子は、右大臣の女御の御腹にて、寄せ重く、 疑ひなき儲の君と、世にもてかしづききこゆれど、 この御にほひには並びたまふべくもあらざりければ、 おほかたのやむごとなき御思ひにて、 この君をば、 私物に思ほしかしづきたまふこと限りなし。 前生《ぜんしょう》の縁が深かったか、 またもないような美しい皇子までがこの人からお生まれになった。 寵姫を母とした御子《みこ》を早く御覧になりたい思召しから、 正規の日数が立つとすぐに更衣…