おやつをもらいたいとき、ドタンバタンと音を立てる。犬の話だ。ユクは怖がっているとき以外には吠えない。だから人に何かを伝えるときには、音を立てて知らせる。フローリングに足の爪を当ててカチカチいわせたり、鼻からブシュッと息を勢いよく出し、くしゃみのような音を立てたりする。最近覚えたところでは、玩具を咥えて持ってきて、口でそれを投げることもするようになった。これは高度は技だ。思わず、犬の意のままに注意を向けてしまう。 タップダンスで来たことを伝える扉の向こうのユク坊。 ある日。ユクが例によって玩具(お肉の形をしたぬいぐるみ)を咥えてから放り投げた。このあとにユクは、自分が放り投げた玩具を威嚇するよう…