歌舞伎座第二部の三日目。 『時平の七笑』は松本白鸚の藤原時平。 以前も書いたが、この数年での松本白鸚の初役への挑戦ぶりには頭が下がる。二〇一九年に『一条大蔵譚』大蔵卿を四十七年ぶりに演じて大成功したあたりから、昨年三月には『沼津』の平作(これはコロナウィルス感染拡大の影響で配信のみになってしまったが)、今年に入ってからは六月に『京人形』の左甚五郎、七月には『身替座禅』の右京といった、これまで演じたことのない役々を積極的にとりあげている。今月は時平に初挑戦、近年ではほとんど片岡我當しかとりあげなかったこの地味な芝居が、あたらしい様相を見せていた。 まずおおきく違うのは、後半なん箇所にも竹本が追加…