あの晴れ間もないようだった天気は名残なく晴れて、 明石の浦の空は澄み返っていた。 ここの漁業をする人たちは得意そうだった。 須磨は寂しく静かで、 漁師の家もまばらにしかなかったのである。 最初ここへ来た時にはそれと変わった漁村のにぎやかに見えるのを、 いとわしく思った源氏も、 ここにはまた特殊ないろいろのよさのあるのが、 発見されていって慰んでいた。 【源氏物語 13帖 明石(あかし)】 連日のように続く、豪風雨。 源氏一行は眠れぬ日々を過ごしていた。 ある晩、二条院から紫の上の使いが訪れ、 紫の上からの文を読んだ源氏は 都でもこの豪風雨が発生している事を知る。 この悪天候のため、 厄除けの仁…