昭和53年5月、テレビ画面で端正な顔の力士が昇進の使いを受けて、神妙に両手をついて 「つつしんでお受けします。心技体のじゅうじつにつとめ、りっぱな横綱になるよう精 進いたします」 と応えていた。 二代目横綱「若ノ花」がうまれた瞬間であった。 若の花というのは、わたしの子供の頃は相撲界のヒーローで、『若乃花対栃錦』の闘いは、おやじたちがよく話題にしていたことを覚えている。 初代若乃花はこの横綱が所属する部屋の二子山の親方で、テレビでもこの伝達のときにも、横綱のとなりに座っている姿が見られた。 われわれと、同い年の横綱誕生でうれしかったこともあり、Yの家で話題に。 私「なあ、若三杉がとうとう横綱に…