「五万円の落とし物」(長女1ヶ月) 困ったことがあった。 土日になると家の前が騒がしかった。朝の7時くらいから騒がしい。晴れた日は毎週のように数人のおじさんおばさんたちが話している声が聞こえた。 僕たちが住んでいた地域は史跡、旧跡が多く、うちの前にも旧跡の案内板みたいなものがあった。近所を歩いていると、文人の旧跡を訪れる人に道を聞かれたり、ガイドさんでもないのに説明を求められることもあって、僕も誰々さんのうちはそこですよ、とか知り合いのように言っていた。 子供が生まれる前は、そんな土日の朝の騒がしさに苛立つこともあまりなく、眠りの深い僕は起きることもなかった。妻はたまに起きてしまうようで面倒臭…