「頼む、誰か!」「はぁ、はぁ……」 監督の枯れた声が、容赦なく照りつける 夏の太陽の下、グラウンドに響き渡る。 僕たちサッカー部は、残り5分で1点ビハインド。 選手たちの息遣いは荒く、疲労困憊の様子だった。 僕はベンチで、ただ祈ることしかできない。 勝利への執念と、どうすることもできないもどかしさが、 僕の胸の奥で渦巻いていた。 その時だった。 「小林!アップだ!出るぞ!」 信じられないことに、僕の名前が呼ばれた。 声の主は監督。 まさか、この土壇場で僕がピッチに立つなんて。 現実感がなく、夢の中にいるような感覚だった。 隣にいた控え選手も、目を丸くして僕を見ている。 レギュラーの星野が、相手…