小学館の日本の歴史で、いま明治前期を描いた「文明国を目指して」(牧原憲夫)を読んでいます。ふと思い出したのが、浅田次郎さんの「遠い砲音(つつおと)」という短編でした。 明治維新といえば、身分制度の撤廃、教育義務化、赤煉瓦の建築、ガス灯など前向きな文明開花を連想しますが、この時代は庶民にとって決して楽ではなかったことが日本の歴史に細かく記されています。 近代国家建設のスローガンで、慣れ親しんだ生活習慣を捨てざるを得なかっただけでなく、厳しい税の取り立て、また曖昧な情より法を優先する政策が強行されました。明暗どちらもあったのに、少なからぬ庶民の実感である「マイナス」より、政府が目指した「プラス」イ…