“人生は綱渡り”、この言葉はもう手垢がつき過ぎてしまって、それを聞いても、“はいはい、その通り。わかってますって!”と盛大なため息を吐きながら返事をしたくなるのは何も私だけじゃないと思う。 でも改めて考えてみると、言い得て妙な言葉ではないか、と今更ながらに思う。 目の眩むような高い場所で、細い綱の上を長い棒を手にした人が右に傾き、左に揺れつつも一歩一歩前へと進んでいく、そんなビデオをYouTubeで見た。 ビデオの前で息を詰めてその様子を見ていた私は突如思った。 “瞬間、瞬間の彼の命がまるで目に見えるようだ” 彼が足を前に出すその時、そしてバランスを崩して大きく体を揺らすその瞬間をハラハラしな…