洋の東西を問わず、家畜糞が作物の栄養源になることは知られていた。ただし、小屋飼いなら糞尿を確保できるが、放し飼いの場合は容易ではない。放牧が主体の欧州では、放牧中の畜糞で肥やした後に作物栽培する三圃式の方法があった。 家畜糞が肥料になるなら人糞尿も、と考えたのは道理である。日本ではずいぶん古い時代から、農民は自家の糞尿にとどまらず町屋から回収されたそれも使っていた。汚穢屋 (おわいや) と呼ばれた回収業者から農民の手に渡った。 『農民哀史』(渋谷定輔.1970) に、1925年(大正14年)当時の人糞尿(下肥)利用のことが出てくる。「(東武東上線鶴瀬) 駅の貨物ホームには、すでに、東京から昨夜…