対談者: 氷上 静(ココアン大学哲学科講師) 徒 然士(小説家・同大学講師) 於:喫茶店「小古庵」 徒然士: いやはや、氷上君。君が千早亭小倉などという、まだ評価も定まらぬ無名の作家に興味を持つとは、実に奇妙なことだ。私は彼の作品群を読んで、その構成のアンバランスさ、プロットの破綻に、正直なところ、ちょんまげが生えそうになったがね。 氷上静: 私はむしろ、その「アンバランスさ」にこそ、彼の本質が示されていると考えています、徒先生。彼の作品群、特にこの「ココアン区」を舞台とした一連の小説は、閉じた世界で多様な人間模様を観察する「箱庭小説」 の形式をとりながら、その実、極めて野心的な思考実験の場と…