常陸の女王のまだ顔も見せない深い羞恥を 取りのけてみようとも格別しないで時がたった。 あるいは源氏がこの人を顕《あら》わに見た刹那《せつな》から 好きになる可能性があるとも言えるのである。 手探りに不審な点があるのか、 この人の顔を一度だけ見たいと思うこともあったが、 引っ込みのつかぬ幻滅を味わわされることも思うと不安だった。 だれも人の来ることを思わない、 まだ深夜にならぬ時刻に源氏はそっと行って、 格子の間からのぞいて見た。 けれど姫君はそんな所から見えるものでもなかった。 几帳《きちょう》などは非常に古びた物であるが、 昔作られたままに皆きちんとかかっていた。 どこからか隙見《すきみ》が…