「女院がお崩《かく》れになってから、 陛下が寂しそうにばかりしておいでになるのが心苦しいことだし、 太政大臣が現在では欠けているのだから、 政務は皆私が見なければならなくて、 多忙なために家《うち》へ帰らない時の多いのを、 あなたから言えば例のなかったことで、 寂しく思うのももっともだけれど、 ほんとうはもうあなたの不安がることは何もありませんよ。 安心しておいでなさい。 大人になったけれどまだ少女のように思いやりもできず、 私を信じることもできない、可憐なばかりのあなたなのだろう」 などと言いながら、 優しく妻の髪を直したりして源氏はいるのであったが、 夫人はいよいよ顔を向こうへやってしまっ…