女王のお住まいになっているほうの庭を遠く見ると、 枯れ枯れになった花草もなお魅力を持つもののように思われて、 それを静かな気分でながめていられる麗人が直ちに想像され、 源氏は恋しかった。 逢いたい心のおさえられないままに、 「こちらへ伺いましたついでにお訪ねいたさないことは、 志のないもののように、誤解を受けましょうから、 あちらへも参りましょう」 と源氏は言って、縁側伝いに行った。 もう暗くなったころであったが、 鈍《にび》色の縁の御簾《みす》に黒い几帳《きちょう》の 添えて立てられてある透影《すきかげ》は身にしむものに思われた。 薫物《たきもの》の香が風について吹き通う 艶《えん》なお住居…