🍂【源氏物語540 第16帖 関屋1】石山寺に参詣に来た源氏の君、空蝉の君は逢坂の関ですれ違う🪷 〜以前の伊予介《いよのすけ》は 院がお崩《かく》れになった翌年 常陸介《ひたちのすけ》になって任地へ下ったので、 昔の帚木《ははきぎ》もつれて行った。 源氏が須磨《すま》へ引きこもった噂《うわさ》も、 遠い国で聞いて、悲しく思いやらないのではなかったが、 音信をする便《たより》すらなくて、 筑波《つくば》おろしに落ち着かぬ心を抱きながら 消息の絶えた年月を空蝉《うつせみ》は重ねたのである。 限定された国司の任期とは違って、 いつを限りとも予想されなかった源氏の放浪の旅も終わって、 帰京した翌年の秋…