ずいぶん老人《としより》めいておしまいになったと思いながらも 源氏は畏《かしこ》まって申し上げた。 「院がお崩《かく》れになりまして以来、 すべてのことが 同じこの世のことと思われませんような変わり方で、 思いがけぬ所罰も受けまして、 遠国に漂泊《さすら》えておりましたが、 たまたま帰京が許されることになりますと、 また雑務に追われてばかりおりますようなことで、 長い前からお伺いいたして故院のお話を承りもし、 お聞きもいただきたいと存じながら果たしえませんことで 悶々《もんもん》としておりました」 「あなたの不幸だったころの世の中はまあどうだったろう。 昔の御代もそうした時代も 同じようになが…