円光寺という町があった。 否、もちろんまだある。私が家族と共に共同炊事場、風呂無し、木造アパートで幼少期を過ごした町である。 中島らもに『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』という小説がある。 誰にでも踏んづけられた思い出が詰まった町や、血気盛んに踏んづけて蹂躙しまくったような町がひとつやふたつあるだろう。円光寺に踏まれたのか、踏んだのか、は判然としないが、大切な時間を過ごした町ではある。 僕に踏まれた町と僕が踏まれた町 (集英社文庫) 当時の円光寺には、北陸一の売上を誇ったというタバコ店があり、食に関しておしなべての商店が並び、バスロータリーから垂直に伸びる円光寺商店街には書店、化粧品店、食堂、…