はじめに セレクション俳人07 岸本尚毅集(邑書林 2003.6.10)を読み、季重なりの多さに吃驚した。だがこれはもちろん意図的だ。 巻末の「散文」の中の「写生と季語のダイナミズム」を読んでいて、季題をどのように考えているかを知った。 今回は、この散文による「季題と写生の関係」の重要と思われる部分を拾っておこうと思う。 季重なりの句 これは本当に多い。目につくものをいくつか挙げる。 鯰ゐて朴の落葉の降ってくる:鯰ー夏、朴落葉ー冬 冬空へ出てはつきりと蚊のかたち:冬空ー冬、蚊ー夏 雪の上大きな影は椿の樹:雪ー冬、椿ー春 月の出や冬葉が四方八方に:月ー秋、冬ー冬 葉牡丹やダンスの汗がうつすらと:…