訓読 >>> 429山の際(ま)ゆ出雲(いづも)の子らは霧(きり)なれや吉野の山の嶺(みね)にたなびく 430八雲(やくも)さす出雲(いづも)の子らが黒髪は吉野の川の奥(おき)になづさふ 要旨 >>> 〈429〉山の間から湧き立つ雲のように溌剌としていた出雲の娘子は、霧になったのだろうか、そうでもあるまいに吉野の山々の峰にたなびいている。 〈430〉たくさんの雲が湧き立つように生き生きとしていた出雲の娘子の黒髪は、吉野の川の沖に浮かんで漂っている。 鑑賞 >>> 「溺れ死にし出雲娘子(いづものをとめ)を吉野に火葬(やきはぶ)る時、柿本朝臣人麻呂の作る歌二首」。吉野行幸の折、出雲の娘子が吉野川に…