元禄15年1月12日。28になる北方村の百姓船頭新八は名古屋納屋の17になる女に子を孕ませていた。継母は金を求めるが、新八に金は無かった。この夜、女はやむを得ず新八の膝の下に置いた脇差を取り、新八を切ったが肘をわずかに傷つけただけだった。新八はそんなに死にたいのであれば酒を持ってこいと言って静かに酒を酌み交わした。女はもろ肌に数珠をかけて侍を切り殺した。自分も腹を突き、咽を刺すが手傷程度で思うようにはいかなかった。1日生きながらえて死ぬ。新八は大酒飲みで女にだらしがなく、北方でも孕ませた女がいた。