宮はしまいには戯談《じょうだん》をお言いになったが 酔い泣きなのか、故院のお話をされてしおれておしまいになった。 二十幾日の月が出てまだここへはさしてこないのであるが、 空には清い明るさが満ちていた。 書司に保管されてある楽器が召し寄せられて、 中納言が和琴《わごん》の弾き手になったが、 さすがに名手であると人を驚かす芸であった。 帥の宮は十三絃、源氏は琴、 琵琶の役は少将の命婦に仰せつけられた。 殿上役人の中の音楽の素養のある者が召されて拍子を取った。 稀《まれ》なよい合奏になった。 夜が明けて桜の花も人の顔もほのかに浮き出し、 小鳥のさえずりが聞こえ始めた。 美しい朝ぼらけである。 下賜品…