驚きと恐れに 宮は前へひれ伏しておしまいになったのである。 せめて見返ってもいただけないのかと、 源氏は飽き足らずも思い、 恨めしくも思って、 お裾《すそ》を手に持って引き寄せようとした。 宮は上着を源氏の手にとめて、 御自身は外のほうへお退《の》きになろうとしたが、 宮のお髪《ぐし》はお召し物とともに男の手がおさえていた。 宮は悲しくて お自身の薄倖《はっこう》であることを お思いになるのであったが、 非常にいたわしい御様子に見えた。 源氏も今日の高い地位などは皆忘れて、 魂も顛倒《てんとう》させたふうに泣き泣き恨みを言うのであるが、 宮は心の底からおくやしそうでお返辞もあそばさない。 ただ…