「蝋燭《ろうそく》をつけて参れ。 随身に弓の絃打《つるう》ちをして 絶えず声を出して魔性に備えるように命じてくれ。 こんな寂しい所で安心をして寝ていていいわけはない。 先刻《せんこく》惟光が来たと言っていたが、 どうしたか」 「参っておりましたが、御用事もないから、 夜明けにお迎えに参ると申して帰りましてございます」 こう源氏と問答をしたのは、 御所の滝口に勤めている男であったから、 専門家的に弓絃《ゆづる》を鳴らして、 「火 危《あぶな》し、火危し」と言いながら、 父である預かり役の住居《すまい》のほうへ行った。 【第4帖 夕顔】 「蝋燭《ろうそく》をつけて参れ。 随身に弓の絃打《つるう》ち…