これから、観光は哲学的にも重要な概念になっていくでしょう。そもそもひとが観光するというのは、とても興味深い現象です。さきほどもいいましたが、観光地に行くとき、みなすでにその場所について知っている。にもかかわらず訪れる。「富士山っていったいどんなかたちをしているんだろう」と思って富士山に行くひとはいません。では、なぜ知っている場所にわざわざ行くのか。観光客はそもそも何をやっているのか。これは、知識とはなにか、欲望とはなにかといった問いと関係する興味深い問題です。ところが、哲学者たちはこの問題についてほとんど考えてきませんでした。(東浩紀『哲学の誤配』ゲンロン、2020) おはようございます。前回…