責められているかの如く、 ——なにを泣く。 高氏は刺々《とげとげ》と心でののしる。 あッちへ行け。 消えてなくなれ。 しかし、 それはじぶんの慚愧《ざんき》へ向って言ったことばでもある。 彼の過失が、 そのまま藤夜叉にも同等な過失だったと言いきれるほど、 むごい彼でもなかったし、 口を藉《か》るべき酒気もいまは失せていた。 殊には、遊女でもない小むすめ。 ただ寒々と、誰へでもない腹がたつばかりだった。 「藤夜叉」 怺《こら》えかねて、 「もうよせ、泣くのは」 そばへ寄って、かかえ起した。 どこもかも触れるところが濡れている重さだった。 「わしがわるかった。……たのむ、このことはたれにもいうなよ…