「夢」にテーマを絞って、和歌を集めてみようと思い、まず「古今和歌集」で探してみた。 山寺に詣でたりけるによめる 紀貫之 宿りして春の山べに寝たる夜は夢のうちにも花ぞ散りける 【意訳】 春爛漫の山の宿で眠った夜には、夢の中でも花びらが散り乱れていた。 詠み人は、夢うつつの区別もつかないほどに桜の幻影に取り込まれ、あたかも恋が成就した瞬間の多幸感とも言うべき情感にひたっているように思われる。 けれども、夢の中の花はすでに散り始めているという。 無上の喜びに満たされながらも、冷え冷えとした終わりの時が遠からず来ることは、予期しているのかもしれない。 ↓参照した本 窪田空穂「古今和歌集(全現代語訳付)…