🌸【源氏物語121 第八帖 花宴5】春の宴 朧月夜の女君との出会い。 〜二人は扇を交換する。この一夜は源氏の運命を大きく変えていく 「ぜひ言ってください、だれであるかをね。 どんなふうにして手紙を上げたらいいのか、 これきりとはあなただって思わないでしょう」 などと源氏が言うと、 「うき身世に やがて消えなば 尋ねても 草の原をば 訪はじとや思ふ」 という様子にきわめて艶《えん》な所があった。 「そう、私の言ったことはあなたのだれであるかを 捜す努力を惜しんでいるように聞こえましたね」 と言って、また、 「何《いづ》れぞと 露のやどりを わかむ間に 小笹《こざさ》が原に 風もこそ吹け」 私との…