🌸夫と妻のすれ違い【源氏物語124 第八帖 花宴8】 若紫の姫君は少しずつ大人になる。葵の上は相変わらず つれない。 源氏は琴を弾きながら歌っていた。 この二、三日間に宮中であったことを語って聞かせたり、 琴を教えたりなどしていて、 日が暮れると源氏が出かけるのを、 紫の女王は少女心に物足らず思っても、 このごろは習慣づけられていて、 無理に留めようなどとはしない。 左大臣家の源氏の夫人は例によってすぐには出て来なかった。 いつまでも座に一人でいてつれづれな源氏は、 夫人との間柄に一抹《いちまつ》の寂しさを感じて、 琴をかき鳴らしながら、 「やはらかに寝《ぬ》る夜はなくて」 と歌っていた。 左…