源氏は胸のとどろくのを覚えた。 どんな方法によって 何女《なにじょ》であるかを知ればよいか、 父の右大臣にその関係を知られて 婿としてたいそうに待遇されるようなことになって、 それでいいことかどうか。 その人の性格も何もまだよく知らないのであるから、 結婚をしてしまうのは危険である、 そうかといってこのまま関係が進展しないことにも堪えられない、 どうすればいいのかとつくづく物思いをしながら源氏は寝ていた。 姫君がどんなに寂しいことだろう、 幾日も帰らないのであるからと かわいく二条の院の人を思いやってもいた。 取り替えてきた扇は、 桜色の薄様を三重に張ったもので、 地の濃い所に霞《かす》んだ月…