これは「ユーラシア叢書」で復刻されていないけれど、どうして選にもれたかと思われる一冊がある。それはE・H・パーカー著、閔丙台訳『韃靼一千年史』で、やはり昭和十九年に大和書店から刊行されている。初版二五〇〇部、会計定価は四円八十銭、菊半並製三八〇ページである。 パーカーはイギリスの東洋学者で、同書はA Thousand Years of Tartars,1924の翻訳である。まさに直訳で、Tartarsが韃靼と訳されている。それは前回のユッタ『韃靼・西蔵・支那旅行記』も同様であり、こちらの表記は十九世紀半ばということ、及びユックがフランス人で、最初の表記がTartarieだったことに起因するであ…