宮沢賢治は1911(明治44)年8月、宮沢一族が中心となって花巻近郊の大沢温泉で毎年行っていた夏期講習会で、島地大等(しまじだいとう、1875~1927)による「大乗起信論」の講話を聴いています。 大沢温泉には賢治も泊まった200年前の建物が残っています 大等はこのとき36歳、後に東京帝国大学等でインド哲学を教える新進気鋭の仏教学者で、盛岡の願教寺の住職でした。賢治は15歳、13歳の妹トシも参加していたことでしょう。彼女が「自省録」のなかで「大乗の菩提即煩悩の世界に憧憬と理想」と記していることを以前紹介しましたが、この「大乗」は「大乗起信論」のことだと思われます。 賢治はその後、1914(大正…