鉄砲に比べ、大砲の国産化の方は難航している。大友氏が小型青銅砲の製造を行っていたようだが、銅はとにかく高価であったから、製造コストが非常に高くつく。代わりに安価な鉄で大砲を鋳造する、というのが世界的な代替手段なわけだが、日本においては難しかった。なぜか。 これは技術的要因、というよりも材料の質によるものだ。日本では古来より砂鉄などを原材料にした「タタラ銑鉄」により鉄を生産していたのだが、実はタタラにより得られた和鉄は、この種の鋳造に向いていなかったのである。 大砲製作に適した原材料は、ケイ素と炭素が適度に多く入っている鉄だ。柔らかく、靱性(じんせい)のある鉄――これを溶かして鋳造した結果、炭素…