マードックの小説『鐘』(1958年、日本語訳・丸谷才一、集英社文庫、1977年)を読んだ。 著者のアイリス・マードック(1919年~99年)は、20世紀を代表するイギリスの女性小説家、哲学者。先日読んだ『実存主義者のカフェにて』(サラ・ベイクウェル、2016年、日本語訳・向井和美、紀伊國屋書店、2024年)のなかに何度か名前が出てきて、この本の著者ベイクウェルが影響を受けていることを明言していたので、マードックの代表作とされる『鐘』を読んでみたのだ。 奥行きがあって印象深いマードックの『鐘』 『鐘』の主要舞台は、ウェールズに近いイングランド南西部グロスタシャー州の小さな町にある信仰会インバー・…