こどものころからの夢のひとつに「目撃者になりたい」がある。 エプロンがけにサンダル履きで、手には買い物カゴもしくは干しかけの洗濯物を抱えていると、より望ましい。ザ・家事の途中、私は殺人犯らしき人を目撃する。 「ちょっと変だな、この人」と少しだけ気にかけながら家事を続行すると、それを追うように、通りを警官たちがあわただしく駆けてゆく。 「奥さん、いま、ここを誰か通りませんでしたか?」と警官の一人が尋ねる。 私は「ええ。いましがた、ここを男の人が走って通り過ぎましたわ。あの人が何か…?」と、答える。 愉悦の瞬間である。 あの人が…何か?これ、言ってみたかった! 「いや、詳しいことは話せませんが、あ…