農の仕事とくらしは、山林原野とその資源、そのありようと地続きである。山からのさまざまな恩恵なくして農の文化、里のくらしは成り立たなかった。農とくらしにまつわる山の幸について考えてみたいと思う。 子どものころ、親や年長の子らに導かれて、さまざまな山の幸を知ることができた。ただ、私の農的なくらしが濃密だったのは中学卒業までで、隣県の高校に越境進学し下宿生活になってからはそれができなくなった。その知識と経験は中途半端になってしまったので、ここに綴る内容は、ずっと生家に住み、こうした野山の知識と経験に長けた兄に補ってもらったものだ。 私の郷里は新潟県南の津南で、長野県と接する県境の町である。信濃川の最…