偏った人間が考えた「最高の世界」から抜け出す物語。 ディックは「現実/非現実」みたいな作品より「人間/非人間」みたいな作品のほうが好きで、幻想的なSF作家みたいに評されてるのがあんまり気に食わなかったけど、改めて読んでみるとやっぱりそういうのも良いものだなあ、と単純明快単細胞にそう思った。前振りできっちり思わせぶるし、各種ディストピア描写も行き過ぎない濃度で胸焼けすることなく、けれど飽きることもなく楽しめた。 キャラクターはそれぞれ、宗教、お花畑、陰謀論、共産主義闘争社会(?)って感じかな。前から二番目までが特に描写的に不安や異物感が強くて好き。こう並べてみるとシルヴェスター的な人が知り合いに…