余りに奇怪と身もだえしたときに夢がさめたと若侍は人に語った。 この話が人から人に伝わり、清盛の耳にとどいた。 清盛の使者が立ち、雅頼に、若侍の話を詳細に聞きたいから、 当方へ差し出されたいと申し出た。 しかしすでにかの若侍は、 後難を恐れて逐電《ちくでん》して行方は誰も知らない。 雅頼は清盛のところに参上して、そのような噂は作りごと、 全く事実でありませぬ、と申したので、この夢の話は不問とはなった。 しかし奇妙というか、暗合というか、不思議なことがおこった。 清盛は枕もとから銀の蛭巻《ひるまき》をした小長刀《こなぎなた》を離さず、 常に寝所に守り刀として置いていたが、ある夜急に消えた。 盗まれ…