【平家物語71 第3巻 法印問答①】 重盛に先立たれて以来、 清盛は福原の別邸に引きこもったまま、 世間に姿を見せなかった。 何かというと、 清盛の行動を邪魔立てするうるさい重盛であったが、 心の底から 清盛のことを親身に考えている息子でもあった重盛が、 遠く帰らぬ人となってみると、 清盛には、彼のえらさ、 立派さがつくづくわかるように思われてならぬのである。 おのれとはまるで、異質の息子であり、 考え方も随分と違っていた。 しかし、親と子の間をつなぐ強い絆だけは、 しっかりと結びついている。 人の死など何とも思わない清盛が、 重盛の死だけはよほど身にこたえたものらしかった。 十一月七日の夜、…