奏楽所が遠くて、 細かい楽音が聞き分けられないために、 楽器が御前へ召された。 兵部卿の宮が琵琶《びわ》、内大臣は和琴《わごん》、 十三|絃《げん》が 院の帝《みかど》の御前に差し上げられて、 琴《きん》は例のように源氏の役になった。 皆名手で、絶妙な合奏楽になった。 歌う役を勤める殿上役人が選ばれてあって、 「安名尊《あなとうと》」が最初に歌われ、 次に桜人《さくらびと》が出た。 月が朧《おぼ》ろに出て美しい夜の庭に、 中島あたりではそこかしこに 篝火《かがりび》が焚《た》かれてあった。 そうしてもう合奏が済んだ。 🌸🎼徒桜 written by のる 少納言のホームページ 源氏物語&古典 …